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フランスで定められた「オフラインになる権利」が楽観視できない理由

フランスで定められた「オフラインになる権利」が楽観視できない理由帰宅後や休みの日に届く業務ほど憂鬱になるものはない。休日気分は吹っ飛び、しかめっ面に早変わり。頭は仕事モードに切り替わって、デートも家族サービスも台無しだ。「教えて!goo」にも「勤務時間外に電話やメールに対応する義務」という相談が寄せられている。フランスでは勤務時間外に「オフラインになる権利」を定めた改正労働法が今年から施行された。なんともうらやましい話だと思いきや、労働者の心掛け次第で有名無実化する危うさもはらんでいるのだ。

■フランスで施行、日本でも?

「オフラインになる権利」を定めたフランスの改正労働法は、従業員50人以上の企業が対象。違反すれば罰則を科されることもあるという。BBCニュースなどは「改正労働法の支持者は(勤務時間外の業務メールの送受信が)ストレスや燃え尽き症候群、睡眠障害、家族関係の問題を引き起こしかねないと指摘した」と伝えている。

そもそも欧州は労働者の権利が守られている印象がある。ドイツのノルトライン・べストファーレン州の大臣は2014年、勤務時間外の電話やメールを禁じた「反ストレス法」の制定を呼び掛けて世界の注目を集めた。企業の意識も高く、休暇中の従業員宛てに届いたメールをすべて削除するシステムを取り入れたドイツの大手自動車メーカーも存在する。

一方、意外なことに日本でも勤務時間外の電話やメールは労働基準法で禁じられていた。企業が勤務後の夜間も休日も業務メールに対応することも求めるなら、それらの時間を待機とみなして賃金を払う必要が出てくるのだ。ということは、これまで違法なサービス労働がまかり通っていたことになる。

■法律だけでは楽観視できない

勤務時間外の業務メールが常態化している現状について、All About社会ニュースガイドで作家の松井政就氏が厳しい意見を述べる。

「電子メールは時間を気にせず相手に送ることができ、いつ読むかは相手の自由ということになっていますが、勤務先から来たメールの場合、プライベートな時間であっても対応せざるを得ないのが実情です」。会社員の経験があるだけに実感がこもっている。

松井氏は「たとえすぐに対応しなくてもよい内容でも、ひとたび読んでしまえば気になります。時間外にもかかわらず業務に関係した頭脳労働が生じてしまうわけです」とし、「これは形を変えた無報酬の労働です」と訴える。

フランスの労働者に新たに与えられた「オフラインになる権利」について、「目的はいくつかありますが、中でも重要と考えるのが、勤務時間外に業務メールをチェックしなくてもよくなる点です」と解説し、「法律ができたからといって、楽観視してはいけません」と忠告。

「『チェックしなくてもいい』ということは『チェックしてもいい』わけで、もし、業務時間外にメールをチェックした方が評価につながるとなれば、この法律が意味をなさなくなるからです」と理由を明かす。

■電子メールで激変した労働環境

電子メールがビジネスツールとして定着したことで労働環境は大きく変わった。

松井氏は「電話しかなかった時代は、よほど重要な目的でないかぎり上司が部下にプライベートな時間にかけてくることはなかった。だから誰も『電話に出なくてもいい権利』など考えもしませんでした」と振り返り、「電子メールはそうした公私の時間の境目を失わせ、労働者はプライベートな時間さえも評価に関わる時代としてしまいました」と嘆く。

「これは実に恐ろしいことです。なぜなら会社側は形としては強制をしないまま、メール1本で精神的な時間外労働を強いることができてしまうからです」(松井氏)。メールを送る上司に強制の自覚がなければ、部下の逃げ場はますますなくなるだろう。

一方で休み明けに仕事が山積するのを避けるため、部下が自らの意思で業務メールをチェックしてしまう場合も多い。知らず知らずのうちに会社側に付いてしまう従業員がいるかぎり、法律が十分に効力を発揮するのは難しくなってしまう。

実際、フランスで始まった「オフラインになる権利」だが、業務に支障をきたす恐れがあるとして実効性を疑問視する意見も出ているそうだ。

松井氏は「この法律はそのうち、『チェックしなくてもいい』として本人の意思に任せるのではなく、『チェックしてはならない』に変わる可能性を秘めていると言ってよいでしょう」と予想する。「オフラインになる権利」が確立するか否かは、労働者自身の意思にかかっているようだ。

●専門家プロフィール:松井政就
作家。政治、経済からスポーツ、エンタメまで幅広い分野に精通している。主な著作に「本物のカジノへ行こう!」(文春新書)「大好きなカレを落とす恋愛テクニック50」(オープンアップス)「経済特区・沖縄から日本が変わる」(光文社)など。「FORZA STYLE」(http://forzastyle.com/)で「SONY元異端社員の艶笑ノート」を連載開始。

(武藤章宏)

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)

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